週末には炒りたてのお豆でコーヒーを
今回の記事では、好きが高じてコーヒーインストラクターの資格を持つ加藤が、自宅でできる焙煎方法をお伝えします。

コーヒーを飲み始めたのは、確か中学生の頃。
親が飲んでいたインスタントコーヒーを飲んだのが最初だった。
その時はまだコーヒーの産地はおろか、コーヒーの味なんて全部同じだろうと思っていた。
少しずつコーヒーに深入りし始めたのは、大学生の頃から。
「Momaに展示されているドリッパーがある」と聞いてケメックスのことを知り、
一人暮らしをするようになってそれを手に入れた。
市販の粉を買ってきてハンドドリップをした時、
今まで飲んでいたコーヒー との味の違いに驚いた。
今思うとめちゃくちゃな淹れ方だっただろうけど、
コーヒーには苦味と香り以外に「甘み」という要素があること、
そして、その要素にはいろんな種類があること。
その味ができる仕組みが知りたくて、いろいろな本を読むうちに、
家で簡単に焙煎ができる方法があることを知って
「焙煎上手」というハンドロースターを使ってみたのが、初めての焙煎。



ペルーやエチオピアやタンザニアの大勢の人たちが、
生活をかけて一生懸命育ててくれたコーヒー豆をなんども台無しにした。
それでも続けていると次第にコーヒーらしいものになってくる。
考えてみたら焼きたてのコーヒーなんて、この時初めて見たかもしれない。
甘くて香ばしい香りと立ち上る煙に包まれて、まだ少しピチピチと爆ぜる音が聞こえるコーヒー豆は、
なんだかとても綺麗に見えた。
そんなこんなで、すっかり自家焙煎にはまってしまった私は、
今では400gの半熱風式焙煎機(焙煎機の中で はかなり小型)をついに購入し自家焙煎をするように。
今回はコーヒーに興味のある方に少しでも参考になればと、
私の自家焙煎の原点「焙煎上手」でのハンドローストの方法をご紹介します。
自宅で簡単に焙煎するための道具をご紹介
生豆 / 焙煎上(ハンドタイプの焙煎機) / カセットコンロ
計り / タイマー(スマホでもOK) / うちわ / ざる / スプーン / キャニスター、タッパーなど




おすすめのお店をご紹介します。
生豆本舗
https://www.namamame.jp/
100gから10g単位での購入が可能な豆屋さん。
これだけ少量から購入できるお店はなかなかありません。
ハンドローストにはぴったりです。
その時々で珍しい豆も入っていたりするので、サイトを見ていて飽きません。種類も超豊富。
ワイルドコーヒー
http://www.wild-coffee-store.com/
500gから購入可能。
生豆は日持ちがするので、慣れてきたらまとめて買っておくと、お得かもしれません。
焙煎の手順
購入した生豆には、カビや虫食い欠けや割れなど「欠点豆」と呼ばれる不良豆が必ず混ざっています。
出来るだけ均一な味に焼きあがるように、まずはこれらを取り除く「ハンドピック」という作業を行います。


2. 生豆投入
ガスコンロを用意し、焙煎上手に生豆を60gほど入れます。
これ以上入れるとムラになりやすくなりますし、焙煎中に豆が飛び出てくるので、あまり欲張らず。
最初は40g~50g くらいから始めると、振りやすくて楽かもしれません。


3.「強火の遠火」でじっくりあっためる
ここから先は、焙煎が終わるまで焙煎機を振り続けてください。止めちゃダメです。
カセットコンロを強火にして、火の先端が焙煎機の底につくかどうかぐらい。
「強火の遠火」で、全体を予熱するイメージであっためていきます。
ここでしっかり豆の水分を抜いておくのがうまく焼くコツです。


途中、チャフ(シルバースキン)という豆の皮が舞い始めます。
時々豆をスプーンですくい出してみて、ほんのり茶色くなってきたら水分が抜けている証拠です。
浅煎りにしたいときは、予熱時間をやや長めに(5〜7分くらい)。
深入りが好きな方は、この工程が3~4分くらいで終わるように火からの距離を調整するといいです。
4.「1ハゼ」
豆が薄茶色に色づいたら焙煎機の位置を少し低くして温度を上げて、一気に豆の色を濃くしていきます。ここでも、時々スプーンですくって時間と色の変化を確認しておくと好みの焙煎具合が掴みやすくなります。
そのまましばらく焼くと、煙が立ち始め、パチッ、パチッっと豆が弾ける「1ハゼ」の音が聞こえてきます。これが聞こえ始めたら、少しずつ火から遠ざけて、ゆっくり温度を下げていきます。


煙が弱くなって爆ぜる音が聞こえなくなった頃が、だいたい中煎りの目安。
浅煎りが好みの場合は、1ハゼ の中盤か終盤あたりの鳴り止む前にザルにあけて冷却に進みましょう。
5.「2ハゼ」
やや遠火のままさらに加熱を続けると、再び爆ぜる音が聞こえてきます(2ハゼ)
この時の音は、1ハゼと違って「ピチッ!...ピチッ!」と、軽い音です。
この音が聞こえ始めたあたりが、だいたい中深煎りくらいでしょうか。
音が聞こえなくなるまで焼くと、表面にオイルが浮き出てくるような、深入りが出来上がります。
2ハゼ以降は焙煎の進み方が早くなるので、こまめに豆の様子をチェックしながら煎り止めのタイミングを決めます。
6. 冷却
好みの具合に焼けたら一気にザルにあけ、うちわやドライヤーですぐに冷やしてください。
ザルにあけてからも、余熱で少しずつ焙煎は進んでしまうので、
広めのザルに均一に広げ、一気に冷やすイメージで、とにかく扇ぎます。
※出したばかりの豆はとても熱いので、素手で触らないようにしてください。


7. 再びハンドピック
しっかり冷えたらもう一度ハンドピック。
ここでは最初に見落としていた欠点豆と、焙煎によってできた欠点豆を取り除きます。
焦げていたり、欠けていたり、全体に比べて色が薄すぎ、濃すぎる豆、小さすぎる豆も、容赦無く弾きましょう。
8.完成
これで完成です!
市販のコーヒーキャニスターやパッキン付きの瓶、タッパーなど密閉できる容器に入れて、
陽の当たらない涼しい場所で保管しでください。

冷蔵庫には入れず、2〜3週間で飲み切った方が美味しく飲めます。
(冷蔵庫は長期保管には向きますが、出し入れの際の温度変化や豆の結露で急激に劣化し、匂い移りなどのリスクもあります。)
不思議なことにコーヒーは焼きたて直後より、3日後くらいの方が味に深みが出るようです。
その味の変化を比べられるのも自家焙煎の楽しさです。焼きたて、翌日、2日目~など、飲み比べてみると発見がありますよ。
さらに詳しい(正しい)焙煎方法が知りたい方は、こちらの本もオススメです。
毎回同じように焼くのはなかなか至難の技ですが、どんな味かは飲んでみてのお楽しみ、というのも面白さの一つです。
自家製焙煎をして、より一層コーヒーを好きになる
コーヒーを自分で焼いてみてわかったことは、それはもう、プロの焙煎士がどれほど驚異的な技術を持っているかということ。
(焼けば飲めると思っていた自分が恥ずかしい。)
同じ味を再現することがいかに難しいかということ。
すこしのタイミングの違いや、その日の天気や気温、生豆の保存状態や新鮮さ、さらには原産地の気候や状況など、数えきれないほどの要因が重なり合って、コーヒーの味は作られているということ。




たったこれだけの赤茶色の液体に、どれほどの人が関わっているのか、どれほどの人が汗を流し、どれほどの人が人生をかけているのか。
考えただけでも気が遠くなります。
すごく手軽でいつでもいくらでも飲めると思っていたコーヒーも、焙煎からドリップまで自分でやってみると、なんと手間のかかることか。
もちろんインスタントだって、缶コーヒーだって、全部コーヒーです。私も通勤のお供はコンビニのコーヒーですし、インスタントも缶コーヒーもいろいろ飲みます。
コーヒーの楽しみ方はたくさんあります。
その中の一つとして、たまの週末に自家焙煎なんていかがでしょうか。

忙しく過ごす中でいつの間にか見過ごしている日々の美しさを見つめなおすような写真を目指し、
食やライフスタイルの分野を中心に撮影。
背景と被写体が光に包まれて溶け合うような、柔らかい一体感のある表現が得意。
hueインスタグラムではPhotographer加藤雄也が
「コーヒーのある風景」を撮り下ろした9作品を投稿中。
併せてご覧ください。

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加藤 雄也Yuya Kato
加藤 雄也Yuya Kato