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VISUAL SHIFT プロジェクト Report

:

企画意図を読み解いて、ビジュアルに昇華する。フォトグラファー 許カミン

「伝わるコンテンツ」を生み出すためのノウハウやサービスを紹介していくメディア VISUAL SHIFTとamana visual クリエイターのコラボレーション企画。

本企画では、フォトグラファー許カミンがどのようなインスピレーションをもとに「あらためて考えるビジュアルコミュニケーションの力」特集3記事のビジュアルをゼロからつくりあげていったのかをレポートします。
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▶︎ BRIEFING

こんにちは。許カミンです。

今回のお話を頂いたのが、自粛期間が始まってすぐのことだったのでオンラインでのブリーフィングは初めての経験でしたね。また、広告のお仕事と違って、「カンプ」があるわけではないのでまず特集概要や記事の詳細を編集担当者に説明して頂きました。その後、制作するTOP画像のイメージレファレンスを見ながら、アートディレクターの方とディスカッションを重ねていきました。
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自分はもともと、フードっぽくないフードフォト作品を撮っています。様々なオブジェクトをグラフィカルに表現するのですが、どちらかというと感覚的な作風なので、今回のテーマ「情報の可視化」や「オープンソースで作られるサイト」などとても論理的な解釈が必要な印象だったので、どうやって画に落とし込もうかな?と少し悩みましたね。

記事の内容と単純にリンクするような、「説明的な画作り」は理屈っぽくて面白くないので、まず今回のテーマから抽象的な言葉をピックアップしイメージを膨らませていきました。色々考えて最後に頭に浮かんだのは、「力」とその力が加わることで「変化」が生み出される"瞬間"でした。具体的には輪ゴムが引っ張られ、その力を溜め込んで解き放たれると倍以上の力で飛んでいく。というような一連の動きです。

 

▶︎ LAYOUT


企画のコアの部分が固まってから、さらにそれぞれの記事の内容を読み解いてディティールをラフスケッチに起こしました。

1)「日経ビジュアルデータ、“情報の可視化”がもたらすメリットとは」では、情報やデータを可視化する重要さを、見えない「重力」に置き換え、それによって次々に起こる事象が最終的には爆発(変化)を生むというようなイメージ。




2)「オープンソースで作る東京都新型コロナウイルス対策サイト。透明性が求められるサイト構築の舞台裏とはではコロナ禍の危機感とそのテンションが「力」によってバウンス(変化)するという発想からイメージ。





3)「フルリモート時代、ミーティングの議論を活性化させるビジュアル活用とは」ではグラフィックレコーディング = 書き込むシーンをモチーフに、次々と連鎖反応(変化)が起こっていくその瞬間をイメージしました。





 

▶︎ MOOD & TONE / PROPS


3つのビジュアルには、ある程度の統一感を持たせたいというリクエストがありました。そこで、全体のトーンをシンプルでPOPに、それぞれのビジュアルごとにテーマカラーを設定することにしました。
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イメージ資料からの抜粋   

プロップの構成としては、ひとつのビジュアルの中に3つほどのアイテムを使おうと決めていました。シンプルな形状・POPな色味でありながら、一目でそれが何か解り、それぞれテクスチャーの差も見せたかったのでなかなか悩ましかったですね。特に自分の写真では、硬さや柔らかさ、変形素材・透過素材などのテクスチャー感を表現することを大事にしているので、色々と試行錯誤しながら画作りを考えました。

文房具ショップや、雑貨屋さんを巡って使えそうなものをハンティングし、最終的にイメージ通りのものが見つからず購入できなかったものは友人に頼んで作ってもらったりもしました。


 
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プロップ提案資料


 

▶︎ SHOOT


撮影前に全体の方向性やトンマナ、プロップの資料を作成しADの方へ共有しフィードバックを頂いて撮影本番へ臨みました。

撮影を始めてしばらくは、準備したプロップそれぞれのサイズ感や全体のバランスがしっくりいかなかったですね。また、基本的に合成を行わない一発撮りのため、様々な仕掛けを作る必要がありその調整にも手こずりました。
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ひとつめに撮影したグラレコのビジュアルは、「テープが転がり落ちる瞬間」をとらえているのですが、当初は事前のスケッチ同様、ノートの角度を緩やかな設定にしていました。しかし、もっと勢いが感じられるようにしたいというリクエストがあり、急遽現場でいろいろな物を探して何度も試してみました。角度がついても全体のバランスが悪かったり、色味が合わなかったり。ADの方の求める表現を具現化するのに試行錯誤したため時間はかかりました。でも、その後は指針ができ比較的スムースに進められたと思います。
 

それぞれのビジュアル全体を撮影した後は、最終的なバランスを想像しながら素材撮影を行っていきます。今回は、簡単なレタッチだったので自分で行いました。




通常、広告案件ではカンプありきの撮影が多いので、自由度はあまり高くはありません。でも、今回のプロジェクトは自由度が高かったので半分仕事・半分作品というような感覚で取り組ませてもらいました。普段作品制作をする時は、当たり前ですが「自分が表現したいこと」にだけ集中しているので他の人の意見はあまり参考にはしません。そういった意味で、意外と譲れない部分もあった気がしますが、最終的にADの方の意見を取り入れ、より良いものが撮れたので満足しています。

改めてですが、自分ひとりのチカラって限界があるなあと感じましたね。


 

▶︎ FINAL OUTPUT

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プロジェクトを通して


今の時代、カメラマンは​"撮影スキル"だけでは全然足りない気がしています。自分は、もともとクリエティブな事や物作りが大好きなので、今回のように企画をすることにも興味があります。機会があれば、是非色々と挑戦していきたいと思います。


許カミン



 

許 カミンKamin Kyo

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